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出かけた時から帰り道

旅行記。一人旅だったりそうじゃなかったりバイク(VTR-F)だったり。

東京~熱海間自転車往復220km【往路】




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【第一章】往路【東京→熱海】



東京湾一周210kmから1年半。


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またやってしまった。

東京と熱海を往復です。


今回の動機も単純。


前回はぐるっと200km強

→つまり往復にすれば片道100km

→それって熱海やん。

→それでしかも温泉でいけたら最高じゃん?

→1日で200kmだと死ねるのは前回ので理解したから一泊すんべ?


とまあ、こんな安直な企画でうまくいくはずもないのですが。

卒業間際で部活もなく社会人にもなっておらずお金はなくしかし時間だけはあるので、最後の無茶と思って走って参りました。


時は平成27年3月5日。


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東京湾での苦楽を共にした愛車と再び旅に出ます。

なお、事前に熱海の宿を予約してあります。
日没前に着けたらいいよねーみたいな舐めたことをこの頃は考えていた。


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30分ちょっと漕いで、神代植物公園の前に到着。道の分かるところはさくさく進んでいかねばならないのだが、焦りすぎると後半で体力が持たない。


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出発から1時間経過。
幹線をほいほいと進むので、追い抜いていく車が怖いものの多摩川に差し掛かります。



はるか山の上によみうりランドが見えるのだけど、なんとか山を越えずにこのエリアを通過したい……と当時の僕は思っていました。

……結論無理でした。


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ほうらいい眺めだろう。

こうやって写真で見る分には中途半端な眺めのよさとお思いでしょう。けれどこれが自転車にはとてもつらいそこそこの傾斜でずーーーーーっと続く坂を上りきったところに見えると、とてもいい景色に見えるんです。自分で書いててドMかなって思いましたハイ。

この後、しばらく山あいのバイパスをのろのろと走ります。
歩道が整備されていて、歩行者もほとんどいないので走りやすくはあるのです。

あくまで道路の環境としては。


アップダウンがもうなんというかこの時点で心折れかかるレベル。しかも想定していたルートよりもだいぶ西に逸れていた(=無駄に進みすぎていた)と分かった日には、地図を見ながら一人乾いた笑いを浮かべてしまいました。



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休憩は1時間に1回挟むようにしていました。
コンビニの敷地の隅っこでしょぼしょぼと座り込んでいる人を見たらきっと僕です。


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西に走りすぎたせいで、本来出会うはずのなかった八王子市に邂逅。


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10分ちょっとしたら神奈川県に入ったのでまあいいとしよう。よくないけれど。

相模原市に入ってしまうと、それまで緩やかなアップダウンをひたすら繰り返すだけの殺風景なバイパスが、市街地に突入。

ああ、東京って十分田舎らしさを兼ね備えているんだと初めて感じました。

神奈川超都会。道は平坦だし。


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米軍厚木基地。
入るんじゃねえ日本の法律で裁くぞという趣旨の看板が設けられています。




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このへん景色つまんないしあんまり記憶にないので一気に飛ばしました。

上の写真はたぶん建設後間もない圏央道
やつらはトンネルをぶち抜いてすいすい通る山を、我々はえっさほいさと乗り越える。


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ほうらそこが圏央道厚木ICだ。
自転車で来るような場所じゃねえんだここは。


そんな厚木市内で休憩したコンビニにて、


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「あたえないで」が消えている。




多摩川を越えてからこのあたりまでずっと地図を取り出してはうろうろしたあげく思い切り無駄足こきましたが、厚木市街まで来てしまえばルート取りに関してはこっちのもの。

海岸線までずどんと幹線が延びているので、ひたすらそれを進むのみです。
海に近づいたら海沿いさえ走っていれば熱海に着くことは着くのです。
ただし所要時間の保証はない。


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はるかまっすぐ平坦な道をとろとろと進み続け(ぐっすり眠れそうレベルには既に疲れている)、ついに平塚市へ突入。海はもう近い。



そのまま走り続けて海に出るのもいいのですが、既に体力的そして時間的余裕を失いつつある僕は景色の良さよりも距離の短さを選択。途中で斜めに切り込み、国道一号線に沿って走り始めました。


するってーと、大磯に入ってすぐ、こんな楽しそうな看板を見つけるのですよ。


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太平洋岸自転車道

まあ、行くしかないですわな。

町役場の裏手に回る道を抜けると。


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海だああああああああああああああああああああ


先に言っておきますが、ここからしばらくの間が往路で最もテンションの高かったタイミングです。
この先太平洋沿いを走るからさぞ……とかお思いでしょうが、その時はそれどころじゃないんですよお楽しみに。

↑市役所ではなく町役場。

太平洋岸自転車道はその名の通り自転車までしか入れません。西湘バイパスと平行してというかどう見てもそのおまけに作られた道。
いいんだ、走りやすいし景色もいいからいいんだ。

この道は海岸よりも一段高くなっているのですが、200mおきくらいに、海側へと降りる道が現れます。


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ということで海抜ゼロメートル地帯でぱしゃり。
地元の人と思われるおじさんが一人だけいましたが、無言ですれ違いました。


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おじさんゴミ拾いしてくれていた。

向こうに見える岸はもう静岡……熱海なんだろうか……それともまだ神奈川なんだろうか……地図的には神奈川だよな……小田原かな……うっわあんな遠くのさらに向こうへ行くのかよもう3時台ですよ……。



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国道一号線に復帰し、しばらくキコキコしてほどなく二宮町に到着。

この店屋さんの看板との絶妙な噛み合いっぷりはなんなんだろう。どっちが先にあったんだろう。


それから11分後。


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小田原市に到着。
二宮町がそんなに大きくないのは知っていたので、まあ順調順調。


それからすぐ。


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あれっ小田原市街とかまだ抜けてな……二宮?
一本の道を走ってるよね自分?

それからまたすぐ。


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……君ら仲いいのね。

後から地図を見てみると、川沿い周辺で境界が激しく入り組んでいました。


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正真正銘小田原市に入ったところで、西湘バイパスの橋脚の下で休憩。

↑東名ではなく西湘バイパスです。

疲れていないと言えばそれは嘘だけれど、そこまで打ちのめされてもいない。
ただ、日没までには熱海に着きたかったんだけれどどうやらそれは叶いそうにない。
着実に落ち始めるペース、そして小田原市街を抜けた先に待つ未知なる道路環境に、この時から嫌な予感はしていた。

「かつて一日に200km以上漕いだ自分なら、2日で200kmとか余裕っしょ! なんなら熱海に到着後も時間余ってたら初島とか行ってみたい」

そんな甘ったれたことを企画段階で考えてしまっていたことの愚かさを、本格的に知りはじめたのである。


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酒匂川と書いて、「さかわがわ」と読む。
この川を越えると小田原の中心街です。

それにしても、ほぼ平地にもかかわらずこの辺から露骨にペースが落ちている。


小田原って言ったらとりあえず小田原城見たいよね?
って、いつしかの僕は思っていました。徐々にペースダウンしている現状をかんがみて断念しました。

この辺から急に、自転車のチェーンの具合がおかしくなる。

ペダル2回転くらいの周期で、すこんとチェーンがスプロケット(歯車)からすっぽ抜ける瞬間がある。
漕げないレベルの異常ではないのだけれど、いちいち拍子抜けを食らうので疲れる。
そして、今後それが直らないどころか悪化したらどうしてくれようか。


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箱根7kmと見るとやたら近いように感じるけれど、何度か箱根までドライブしたことのある僕は知っている。そこに至るまで道がひたすら傾斜のきつい上り坂であることを。


さて、小田原市街を抜けたところで、いよいよ国道1号とはおさらばし伊豆方面に車輪を向けます。

東海道本線と平行して走る国道135号線へとシフト。
ここから伊豆方面へと向かうための唯一の動脈として知られる道です。それらしいシーズンにはそれなりに混む道のようです。


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ふり仰ぐ西湘バイパス。125cc以上のエンジンさえ付けていればこの上を走れたのに……。


ここから自転車がつらいのは、

・アップダウン
・通るべき道の無さ

の二点。これらは自転車を漕ぐ者にとって大きな体力消耗の原因となります。
前者は言うまでもないと思うのですが、上り坂で疲れてもふらふらできなかったり、鈍足で進む脇をびゅんびゅんと自動車が追い抜いていったりするのはそれだけで着実に心身を削ってゆく。


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バス停がこんな風に海側に張り出して設けられるくらいには歩道的なスペースが存在しない。というか実質無い。
端っこの白線より外はかろうじて50cmくらい余裕があったとしても、ふらついて海側へコースアウトしたらそのまま相模湾の藻屑へ一直線になるくらいには隔てるものがない。


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景色は良い。良いのだけれど、そんなもんを悠長に味わっている場合ではない。
よそ見してちょっと車道側にハンドルが振れようものなら、すぐさまボンネットに弾き飛ばされアスファルトに叩きつけられることだろう。



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びゅんびゅんと脇を抜かれて行っている図。
撮るときはもちろん停止せざるをえない訳ですが、相当場所を選ぶ。

こうして写真を振り返りながら書いていると、この小田原以降は「えっ実際の時間としてはこれしか経過していないのか」感がすさまじい。体感としては倍くらいあった。
それだけ、人気のない道というのは心を折られるのである。いや、追い抜いていく車たちもいちおう人といえば人なのですが……。

さらに日が落ちて暗くなってきたとなれば、さらに不安と焦りは増すばかり。


(17:41)


真鶴半島を臨む。
そこそこ観光スポットのようですが、このときの僕からすれば「えっまだ残りこんなに……」という目印でしかない。

直線で言えば10kmに満たない。
されど、道はアップダウンを繰り返し、路側帯らしい路側帯もなく、景色は単調で人気もなく暗くなり始めた、先の見えない道。


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静岡県入り。
なお、この写真を撮っている通り道は走るべき国道に合流できず私有地へ伸びていった為、撮影後50mほど引き返した模様。


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そして伊豆半島へと漕ぎ出す。
振り返れば街の灯。行く先は真っ暗な山道。

無茶な自転車小旅行には比較的慣れているとはいえ、さすがに心細い。東京湾のときは、フェリーの後は賑やかな場所ばかりだったもの。

「いち、に、いち、に」とぽそぽそ声に出しながら、ゆっくり着実に坂を上ります。
ひとつ峠を越えたら、下り坂では漕いでさらに加速ということはせず徹底的に身体を休ませる。

地図上で確認したところによれば残りたいした距離でないという事実だけが救いで、峠を越えても越えても似たような(というか真っ暗な)道が続く。体感では確実に倍以上の時間が過ぎていました。
車の数は減ったものの、速度は相変わらずで容赦なく風を巻き起こして脇を抜けていきます。


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見た目多少明るいけれど、肉眼ではもっと暗い。

そして、この国道135号で有名な看板がこちら。


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美人多しスピード落とせ

……いや、美人を拝むためにスピード落としたところで、わき見運転は危ないと思うのですよ。


とかなんとか内心突っ込みながらも、気持ちの上ではそんなに余裕がない。
あと何度峠を越えれば今日の宿に着くのか。そんなことを考えるだけぬか喜びするからやめようと思っていたときに現れたのが、


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車輪よあれが熱海の灯だ。

体力がというよりは、国道135号の悪環境と暗くなる景色に気持ちがやられていた。
そこにふと見えた熱海の街の光。自転車を止め、金網に張り付いてこの写真を撮った時には今回一番の安心感に満たされました。


ここからの足取りは軽い軽い。
向かうべき場所が見えるというのはそれだけで人間突き動かされるものなんだなとしみじみ思いながら坂を下ります。


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ここからが熱海の市街地というところで一枚。
何を写しているかは不明だけれど、これでもすごい喜びながら撮っていた。

それにしても、小田原からここまでの実際の時間経過と体感でのそれの食い違いっぷりは凄まじい。当日は、実際の所要時間の倍は軽く超えているような気分でした。


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尾崎紅葉『金色夜叉』の貫一とお宮の像。
一刻も早く宿に辿り着きたいと思いつつ、夜の熱海に着いた証拠にこれだけは撮っておきました。


【第一章】往路 ~終~