金曜夜発の東海汽船を利用して土曜早朝に御蔵島に上陸した我々。その日の午後からはハイキングツアーの予定でした。ところが、着いたその日は雨が降ったり小降りになったりの繰り返しだった結果ハイキングには行けず、宿のロビーでWifiを活用したり集落を歩き回ってりして一日を過ごしました。そんな感じで御蔵島の2日目が始まります。
(6:16)
一夜明けておはようございます。おや、海の方に何か黄色いのが見えます。
(6:16)
24時間前に乗ってきた橘丸でした。昨日に続き今日も無事接岸できているようです。
(6:32)
三宅島もよく見えます。天気は少なくとも悪くはなさそうです。
(6:51)
コロナ対策として朝食は食堂ではなく、部屋の前に配られるお弁当を部屋で食べるスタイルでした。
ハイキングツアー:長滝山コース
(8:33)
予定通り8時にガイドの方に宿の前まで迎えに来ていただき、車に乗って御蔵島環状線を終点方向へと向かいます。ちなみに、今回のツアー参加者は我々2名のみです。
今回観光案内所経由でガイドをお願いしたのは、観光案内所のWebにもお名前が載っている栗本さんです。島生まれの島育ちで、ガイドの最中や車の中でも島の昔の生活などを事細かに教えてくださいました。
(8:40)
環状線沿いで一度下車。沿道にあるこれは、スダジイの跡です。この年の夏に台風で倒れてしまったそうです。
(8:46)
御蔵島はオオミズナギドリ(島ではカツオドリと呼ばれる)という海鳥の有数の繁殖地。オオミズナギドリは地上から飛び立つのが苦手な鳥なので、木の上から高さを稼いで飛び立つのですが、それにうってつけなのが枝が斜めに生える(=鳥の足でも登りやすい)スダジイの樹なんだそうです。つまり、万が一スダジイの樹が無くなってしまうとオオミズナギドリの繁殖も難しくなってしまうということ。
ちなみに、同じくオオミズナギドリの脅威になるのが、人間が島に持ち込み野生化してしまった猫。御蔵島では、野生猫の里親募集活動も行われています。
(8:53)
御蔵島は伊豆諸島内でもかなり水が豊かな方の島。島とは思えない深い森の中には、島とは思えないいくつかのちゃんとしたした川が見られます。
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次に寄ったのが、またしても環状線の沿道にあるこちら。草祀りの神様と呼ばれるこの祠は、集落のある島の北側(12時方向)から東西両方向に道を進んだ先(3時・9時方向)それぞれにあります。今回は島の東側に来ているので、我々はいま3時方向にいます。
(9:01)
この祠の前に、その辺からちぎった葉を置き、石を乗せて飛ばないようにします。昔からここには葉っぱを供えてこの先の道中の安全を祈ったそうなのですが、安全祈願以上の意味があります。
それは入山届のような役割。置いていった葉っぱは帰りに外していきます。つまり、夜になっても葉っぱがここに残っていたらまだ山に人がいるという事になるので、島民総出で捜索に出ていたんだそうです。
ということで我々も葉っぱを並べ、二礼二拍手一礼。祠に手を合わせてから先へ進みました。まだ車だけど。
(9:09)
(9:09)
ハイキングコースの入り口までやって来ました。ここから先はガイド必須(観光客だけでの入山不可)の道です。この地点の標高は637.7m。
(9:11)
ここから長滝山の山頂までの往復が今回のハイキングルートです。では早速歩いていきましょう。
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ルートは比較的整備されたトレッキングコースです。しかし雨の翌日だったのでところどころぬかるみがあります。そして山頂へ向かうコースなので基本的には登り続けます。
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ガイドさん、僕らの親よりも年上だろうに、僕らの通常ペースと同じかちょっと速さで歩く(もちろんペースは合わせてくれます)。さすが島育ちのフィジカルの強さに開始5分で舌を巻きました。
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大学の調査機がコースの沿道に設置されていました。
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徒歩でゆっくり高度を上げていくだけで、みるみる植生が変わっていきます。
(9:36)
(9:51)
ひとつひとつの植物について興味深いお話を聞き……ましたが、ごめんなさい詳しい話はあまりちゃんと覚えていないのでここでは書くのをやめておきます。ただ、比較的広いとはいえない御蔵島が、珍しかったり固有だったりする動植物の宝庫であることを知りました。
御蔵島は最高点が851mの島。これは伊豆諸島の中では八丈富士に次ぐ2番目の高さの島ですが、それでもせいぜい800m台。ですが、他地域であれば1000mを超える場所にしか自生しない植物でも、この島では湿度や日照の関係で見ることができるのだそうです。道路を造って日当たりの良い法面ができた結果、そこにたくさん繁殖するようになった高山植物もいるんだとか。
(9:47)
ところで、どういう経緯でこの枝にこんな苔がむしたのか、タイムラプスで誰か教えてほしい。
(9:33)
笹の生い茂る日当たりのいい斜面に出たかと思えば、またすぐに背丈くらいの林の中へ突っ込んでいく。
東洋一とも言われる海食崖を持つ御蔵島の山肌は、天候状況次第では強風に見舞われるので高度を上げるほど高木は減っていきます。それでも我々の両脇の視界を遮るくらいには茂っているので植物たちの力強さを感じます。
(9:38)
尾根っぽい場所に出たと思ったら、長滝山の三角点が現れました。標高は800m。石柱は写真内で標示板の右上に少しだけ見えています。
(9:38)
三角点の場所からは御蔵島最高峰の御山(おやま)が望めますが、見晴らしという点ではすこぶる良いという程でもありません。
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なんてったってここは三角点ではあるけれども長滝山の山頂ではないからです。
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ツゲのトンネルをかがんで抜ける。
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手前に見えるのは御代ヶ池。あの池のほとりを訪れるコースもあります。
(10:01)
ハイキングコースの入り口(標高674m)から説明を聞きつつ歩くこと50分弱で、目的地の長滝山山頂に到着です。標高は850m。最高峰の御山(851m)とは、実は1mしか違いません。
(10:00)
これが山頂からの光景。海面からの高低差がすごい。
御蔵島の大動脈である都道223号御蔵島環状線は、その名前に反して環状になっておらず、島の12時~4時方向までしか島を回っていません。8時~12時方向は道が通っていますがこちらは林道で、4時~8時方向は自動車の通れる道が存在しません。
(10:00)
これが長滝山からその不通区間の方向を見たところ。
戦後すぐ、御蔵島には一周道路を造る計画があったそうなのですが、現在の不通区間に大規模な原生林が見つかりました。結果、環状道路を通さず手つかずのままにすることを選んだのです。よって、この環状線が環状になる計画は未来永劫ありません。
(10:11)
山頂に着くと、ガイドさんから水をいただけました。
山頂では景色を眺めつつ、ガイドさんから島の話を聞けました。御蔵島のハイキングコースがガイド必須になったのは、かつて向こう見ずな大学生が誰にも行先を告げず島内で遭難したのが恐らくきっかけの一つであった……とかいう話も聞きました。
(10:29)
ぼちぼち下山しましょう。来た道を戻ります。
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(10:41)
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ルートから少し離れたところに検査機器が取り付けられていたので、何の機械だろうと望遠で撮ったら温度計でした。11.3℃でした。
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こんな風に景色が開ける瞬間はどちらかというと少なめです。
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おはなしを聞いているところ。
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歩きだしてからおよそ2時間でスタート地点まで戻ってきました。
解散予定のお昼まではまだ時間があるので、都道223号を終点まで走っていただけることになりました。
(11:02)
長滝山の登山口から都道を南下してすぐの場所にある標高677mの標示。その上には「都道最高点」と書かれていますが、設置後に最高点の座を奪われているので、左(グレーの部分)に「223号」の文字を無理矢理加えて「都道\223号/最高点」となっています。
(11:15)
つづら折りをアップダウンしたり斜面を無理矢理ぶち抜いた道を抜けつつ走ること15分。全長15km弱の都道223号を走破しました。9kmポストから終点までの6kmでは1台ともすれ違わなかったし道幅や路面は比較的良環境だったのに15分もかかるあたりに道の険しさをお察しください。
終点は駐車場のような広さになっていましたが、降りることはせずすぐにUターンして引き返しました。
都道223号の終点一帯は南郷と呼ばれ、かつては第二の集落として開拓された地域です。現在港がある北側の集落は、活用できる土地の狭さゆえに、所帯を持つことが許されたのは長男のみでした。次男以降は島を出るか、あるいはこの南郷を切り開くことで所帯を持つことが許されたんだそうです。
昭和40年代には本土への人口流出により、南郷は定住者のいない廃村となりました。それまで本村と南郷の間の移動手段はもっぱら徒歩で、片道4時間の道だったそうです。
(11:20)
南郷寄りの沿道にあった防空壕跡。先の大戦で御蔵島は目立った被害を受けることは無かったそうですが、軍の観測部隊が駐屯していたそうで、山の中には今も遺構があるそうです。それらも観光資源としてツアーを組みたい、とガイドさんが言っていました。
(11:24)
険しい斜面を大胆にパスする頑丈な橋。廃村へのアクセスルートだとはとても思えません。
(11:35)
日常的に吹く強風のせいでがっつり斜めに伸びる樹。御蔵島はツゲの産地としても知られていますが、こういった過酷な環境が良質な木材を産み出しているのかもしれません。ちなみにツゲは印鑑や将棋の駒などに使用される頑丈な樹です。
(11:38)
草祀りの神様のところまで戻ってきました。
(11:38)
お礼のお参りをして、供えてきた葉っぱを祠から外せば、下山の証です。
こうして集落まで無事帰還し、ツアーは終了となりました。島の生き字引の方の話を聞きながら島を歩くことができ、非常に興味深かったです。やはり島の方の生の声を聞けた島旅というのは、印象にも強く残るものです。