富士山麓ツーリング570km【1】
【第一章】立ちゴケ、立ちゴケ、立ちゴケ
2015年9月4日。
(9:31)
道路の上からおはようございます。
時刻は9時30分頃、東京都の真ん中あたりにある小平市で、五日市街道を走行中です。
この付近のエリアで目指す方向へ向かう手段は国道20号をはじめ何本かあるのですが、この道をチョイスしたのは「曲がる回数が少ない」という合理的かつ単純な理由です。
……ただし、片側1車線の区間が多く、ちょくちょく信号に捕まってはじりじり待たされることまでは想定していませんでした。出発後からいきなりくすぶっています。
(9:58)
さらに30分ほど走ったり止まったりを繰り返して、ようやく多摩モノレールとぶつかる。
9時ごろに家を出て、向かっているのは西の方。
(10:23)
またまた30分くらい走ったところの、あきる野市周辺で多摩川を渡らんとしているところ。
だんだん周りの建物が低く少なくなって、景色がのびのびしてきました。
(10:48)
五日市街道を道なりに走っていると、途中で檜原街道と名前を変えます。
いいよーいい感じだよー。
この前は東京湾一周へ行きましたが、同じ走りやすい道でも千葉のそれとはまた違う雰囲気です。狭い日本とはいえ山の形って地方ごとになんとなく感じが違いますよね。
そして道は山の中へ。
両脇を木々に囲まれると、前面に受ける空気がさーっと涼しくなるのが分かります。
(11:00)
山道に入ったところで一枚。
こいつが今回の旅のお供にして交通手段、納車から1週間しか経っていない250ccのバイク、HONDA VTR-Fです。
総走行距離は300kmに満たない。操作はいまだおぼつきません。
……さて、今回の旅の行く先を先にお伝えしますと、
奥多摩周遊道路~そのまま山梨県突入~富士五湖を楽しむ~富士山五合目行きたい~富士山麓界隈で一泊
翌朝も富士山麓を走行~御殿場~熱海~箱根~東京に帰る
という、まあざっくり方向と制限時間だけを決めたプランです。
電車やバスで都心からそれぞれ別々にアクセスしたことしかない場所をバイクで結んでみよう、山へ行こう、そして富士山麓を気持ちよく走ろうというのが今回のコンセプトです。
そしてそれに加えて、納車後1週間にもかかわらず1泊2日でのツーリングを予定。
タイヤやエンジンのならしを十分に終えてもいない(そして何より運転者がバイクの扱いに慣れていない)のに山に行く気ですこいつ。
上り坂できれいに舗装されたワインディングを走ること30分ちょっと。
(11:38)
都民の森の入り口に到着です。
ここには駐車場とトイレがあるので軽く休んでいきます。
僕が周りのライダーを気にしすぎだと思うのですが、周りの見知らぬ先輩ライダーたちとちょくちょく目が合う。というか、彼らのバイク周りでの所作のこなれている感がすさまじい。よろよろ乗り降りしたり準備したりする自分ものすごく恥ずかしい。
(11:39)
「スピード出しすぎは危ないよ。ここで事故っても救急車来るのに2時間半かかるからな」
的な警告の看板がいたるところにあってちょっとビビる。
さてトイレも済ませて続きを走るかー……と、駐車場内でバイクの向きを変えている最中に、悲劇は起きた。
おっとっとっとっとっとっとっとっと(がしゃーん)
初の立ちゴケは奥多摩にて。
ハンドルを曲げたのと同時に車体を傾けすぎて、自分の方へぶっ倒しました。
250ccでもガソリンオイル入れて180kgくらいあるわけで、ある程度のバンクになるとあとはもう手のつけようもなく、ライダーもろともアスファルトさんこんにちは。
シフトレバー(ギアを上げ下げするための左足にあるレバー)がぐにゅんと曲がって操作できない状態に。
「やべえやべえやべえやべえ早走行距離100km足らずでレッカーとか笑えねえローンがローンがまだローンが」
とガチ焦りしながら、その場でスマホを取り出しどうにか対処法はないかと検索。
結果、購入時からデフォルトで積んである工具を使って、てこの原理でえんやこーらと転倒前の位置までなんとか戻しました。
なお、余裕がなさ過ぎて倒れたバイクや曲がったレバーを写真に収める余裕なぞとうていありませんでした!!!!!!
(12:21)
奥多摩湖を脇に見ながらくねくねした道を走り、東京都の西のどん詰まりを突破。
山梨県丹波山村に攻め入ります。うおー。
奥多摩湖の向こうあたりから交通量はぐっと減ります。
そして山道の山っぷりが本格化してきます。
(12:36)
山道ですぞ。道路を侵略せんと両脇に迫る森林。
テンションは上がるけれど、奥多摩周遊道路と比べ路面がよろしくなくて砂利もあちらこちらに散らばっています。走行にあたって油断は禁物。
(12:36)
道の脇には川が流れていて、ふとバイクを停めてエンジンを切ると、せせらぎの音が聞こえます。
エンジンを切らないと、「ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコ」とVTRちゃんのVツインエンジン音しか聞こえません。
……ちなみに、上の2枚を撮るにあたって2度立ちゴケしました!!!!!
<1回目>
跨ったままスタンド下ろしてバイクを傾けたらスタンド下りきってなくて
「え、あ、うそ、あばばばばばばばばばb(がしゃーん)」
<2回目>
一通り写真を撮った後、スタンドを払って跨ろうとしたら足が荷物に突っかかってバランス崩して
「またかよおおおおおおおおおお(がしゃーん)」
(こればかりは実際に声に出して言った)
これら短時間で3回にわたる立ちゴケは、僕の中で鮮明に記憶され今なお心の傷として深く残り、「奥多摩の悲劇」として現在まで語り継がれているのである。
で、この最後の立ちゴケでブレーキレバー曲げちゃいました☆
24歳になったけど、一連の独り相撲がみじめすぎて涙が出るかと思ったよ☆☆☆
「スキッドパッド」というバイク本体を守るパーツを納車時からオプションパーツとして装着していたので、ミラーに擦り傷とレバー変形だけで済んでいるのがせめてもの救い。
(12:47)
出発早々立ちゴケラッシュで心折れるわ行く先不安だわという精神状態をなんとかごまかしつつ、道の駅たばやまに到着。
(13:23)
道の駅の裏手にはつり橋があって、その向こうに温泉があるらしいのだけれど今回は先を急ぐのでパスです。
しかし時間が時間なのでここで昼食。
(12:57)
丹波鹿丼650円。
650円でこの量かいと思わないわけでもないですが、道の駅物価としては妥当なレベル。
地元産のものを使うとなれば多少の費用増もあることでしょう。
名前のとおり鹿肉の丼ですが、臭みはないし美味しいですよん。
空腹を満たしたら、さらに西へと出発。大菩薩ラインを走ります。
いちおうこのあたりも青梅街道と呼んでいいらしい。
(13:36)
途中、トンネルを掘る現場に遭遇。
このでっかいマシンで細長い穴をいくつも開けて、火薬をぶち込んでズドンとやることで穴を掘っていくんだそうです。
(13:39)
大菩薩ラインは整備の行き届いた走りやすい道が比較的多く、しかもこの時は交通量もかなり少なかったので気持ちよく走ることができます。
というか全体的に新しく作り直されているような。
民家の気配もなく電波も通じないガチ山奥なのに、綺麗な路面で道幅も十分なところをずーっと走行できるので、むしろ申し訳ないくらいの走りやすさ。
……ただし僕はこの時3回の立ちゴケから立ち直りきっていなかった。
(13:48)
森林の中をぶち抜いて走ったと思えば、
(14:02)
地形度外視の橋を作って豪快なワインディングをかますことも。
山の中を爽やかかつとろとろと孤独に走りたい人にはおすすめです大菩薩ライン。
あんな精神状態でもそこそこ楽しんでいたのだから、立ちゴケさえしていなければテンションぶち上がりだったろうに……。
ハンドル右手のブレーキレバーが(運転にギリギリ支障ないレベルで)曲がっているので、減速しようとするたびに思い出されるのがつらい。
【第一章】奥多摩→大菩薩ライン編 ~終~